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『macro』×『PILOT』 「青森へ行こう!」<『十和田市現代美術館』>


フリーマガジン『PILOT magazine』増刊号『cise』(2009年7月発刊)と、サロン『macro』のフリー冊子(2010年2月発刊)とのコラボレーション第2弾!現代美術を取り入れ再生を図る“青森”をテーマに、北海道アートシーンの現状と今後について考えます。





インタビュー(April,2010)
asuka / 『macro』スタッフ


>まずは青森の印象について聞かせてください。

伝統や歴史をうまく残して活かしながら、新しいものも積極的に取り入れて、違和感なく融合されているように感じました。

>同じ地方として、良い意味で土臭さが残っているというか、どこかアンダーグラウンドさを感じさせます。
そうですね、京都や金沢とはまた違った魅力があります。方言もそうですし。伝統的な建造物があって、自然が豊かで、季節折々で大きなイベントもあって…と見どころがたくさんあるんですよね。その上、『青森県立美術館』や『十和田市現代美術館』などで近代美術にも触れられるので、いつ訪れても楽しめると思います。

>伝統工芸が土産物にも取り入れられたりしていますね。
“こぎん刺し”もうまくアレンジされていたりするんですよね。今回のフリー冊子も置かせていただいている『ステーブルズ』という弘前の雑貨屋さんでは、テキスタイルのように刺繍をされるアーティストの方の個展も催されているようです。古くから製作されている『弘前こぎん研究所』などもそうですが、それぞれ地域の特色をうまく出されていると思います。

>『十和田市現代美術館』へ行かれての感想を聞かせてください。
美術館というと一般的に静かに鑑賞するのが当然なのですが、こちらの美術館では驚きと感動で思わず声が出てしまいます(笑)。観るだけではなくて、すごく楽しませてくれるんですよね。「遊園地みたいだね」とスタッフのみんなも話していましたが、美術館というくくりでは収めきれない美術館です。一般的には特別展がメインにされていますが、常設展も全く見劣りすることなく素晴らしいんですよね。

>街おこしのためにあえて海外のアーティストを積極的に取り入れているのは思い切っていますよね。こうやって土地を表現し、盛り上げることができるんだと刺激を受けました。
あと、ワークショップも催されているんですよね。その時の内容に応じて、一般も参加できるような。わたしが観た時は、紙で等身大のお相撲さんを作って、それで紙相撲を取られていたのですが、とてもユニークで斬新でした。

>『十和田市現代美術館』の魅力をひとつ聞かせてください。
たくさんありすぎて挙げるときりがないのですが、ひとつは美術館の造りですね。同じ造りの部屋をそれぞれの作品にというのではなく、作品のために部屋がひとつひとつ用意されているというのが素晴らしいです。作品の世界で浸れるために環境が整えられていて、より強調されている印象を受けました。作品展示は屋上まで続いているのですが、順路にしても特に決まりはありませんし、いろんなところに仕掛けがあって、常にわくわくさせてくれます。壁にもアートが施されていたり、細かなところまで抜けが無いですね。

>札幌のアートシーンの印象についてはどのように感じられていますか?
普段は週に1度しか休みを取れないので、本当に観たい企画がある時にしか足を運べていません。自分から気になって観たいと思える企画は少ないです。道外には興味深い建築や空間が多いので、それだけで興奮してしまうんですけれど(笑)。

>建築は後から手を加えるのは難しいかもしれませんが、流行やパッケージされたものばかりでなく、独自性ある個性的な企画がもっと多くあると楽しいですね。
型にはまったというか、行く前から想像ついてしまうのは残念です。企画の形も変化をつけたり、展示の仕方とかも工夫していただけると、もう少し新鮮に映るのではないかと思います。


『十和田市現代美術館』
住所 青森県十和田市西二番町10-9
電話 0176-20-1127
開館時間 展示室 9:00~17:00(入館は16:30まで)、休憩スペースなど 9:00〜17:30(カフェ・ラストオーダー 17:00)
休館日 月曜日 ※月曜日が祝日の場合は翌日
料金 一般 500円 / 高校生以下 無料
ウェブサイト http://www.city.towada.lg.jp/artstowada

街づくりとアートが一体となった取り組み“Arts Towada”のもと、2008年に開館。国内外で活躍する21名のアーティストが、都市や自然、そこに生きる人々との対話の中から生み出したコミッションワーク(依嘱制作)による作品22点を常設展示。各作品はこの美術館のために制作されたもので、建築の設計段階からアート作品と空間が深く結びついている。展示室だけでなく、中庭や屋上、階段室や休憩スペースなど、屋内外のあらゆる空間にアートが展開され、来館者に新たな体験をもたらす。


「楽しみすぎて、前日の夜はドキドキして眠れなかったほど!みなさん期待して行って良いですよ〜!裏切られることはまずないと断言します。コンセプトは“アートのための家”。1作品に1部屋ずつスペースが与えられ、部屋と部屋の間にも楽しいアートがたくさん。遊園地みたいな美術館です。地域密着したスタイルもまた素敵です。」(kappe / 『macro』スタッフ)

「インパクトある楽しい美術館。野外アートは2010年完成予定。街ぐるみのイベントも行われていて、商店街とアートの一体感も面白かったです。」(megumu / 『macro』スタッフ)

「目を奪われるパワフルな現代アートが所狭しと展示してあります。しかも作品へ参加し、体感しながらアートに触れ合えます。ものすごい興奮しちゃいます!」(LIKE / 『macro』スタッフ)

「十和田市内に突然現れる白い箱型の建物の集落はまるでお楽しみ箱、びっくり箱の集まりでした。ひとつひとつの作品がアート空間になっていて、くぐり抜ける度に新しく見たこともないような空間の連続です。中庭や建物の間にまで作品が散らばっていて、ドキドキとキョロキョロがもう止まりません。」(GAKKY / 『macro』スタッフ)

「とっても面白かったです!ロン・ミュエクの『スタンディング・ウーマン』の肌のリアルさに目を奪われ、スゥ・ドーホーの『コーズ・アンド・エフェクト』のシャンデリアではアスカさんと「何これー!」と思わず大声を出してしまい、スタッフさんに注意されてしまいました…すみません(苦笑)。閉館後の夜のライトアップも素敵みたいで、次はぜひ夜にも訪れてみたいです。」(kat’s / 『macro』スタッフ)


インタビュー(July,2009)
山貝 征典 / 『十和田市現代美術館』学芸員

>まずは美術館の紹介をお願いします。
館名の通り、展示してあるのは現代アートだけで、特徴としては全体の8割方が常設展示、いわゆるパーマネント・コレクションで構成されていて、ギャラリースペースもあるというのが一般的な美術館とは逆になっています。常設展示のアーティストは全員、現在も活躍されている方々です。現代アートはまだ評価も定まっていないので、それだけで常設展示を構成するというのは全国的にもあまり例が無いんですけれど、他とは違う美術館を作りたかったという想いが個性としてうまく表現されていると思います。そもそもの成り立ちとして、この辺りは市役所や税務署とか官庁の多い通りで、出先機関の統廃合などによって空き地になってしまっていたのを解消するために、「通りをアートで再生しよう、野外芸術ゾーンを作ろう」という市の“街づくり計画=ArtsTowada”が始まりだったんです。ですから、初めは野外彫刻を置いたり、ストリートファニチャーを置いたりしていく方向だったのですが、休憩スペースも欲しいなどのアイデアをまとめていくうちにだんだんとアイデアが構築されてきて、その流れから美術館になっていったんです。ですから、箱ものを最初に作ったわけではありませんので、通りに開かれているのも、外から筒抜けなのも、つじつまが合っていて、実は理由があるんです。

>街をアートで活性化させようというのが面白い試みですね。
そうですね。美術館に作品をきちんと飾るのではなく、街の活性化を目的とした通り計画の一環なので、スタートの違いとしては大きいですね。

>中へ入って作品を観るのだけが目的では無いとはいえ、常設展だけで客数が伸びているというのはすごいですね!
ギャラリースペースも小さいので、逆に大きな展覧会はできないのですが、十和田市自体もそんなに大きな都市ではないので、逆にコンパクトで良い部分もあるようにとらえています。観ていただいても1時間くらいでまわれてしまうので、疲れず楽しんで帰っていただけるのが良いのかなと思います。家族連れのお客様にもすごく喜んでいただいています。

>街の中心部にとけ込むようにして美術館があるのには驚きました。
大型美術館によくある郊外ではなく、街のど真ん中にいきなりありますので、地方からいらした方はみなさん驚かれますね。

>他とは違う、独自のこだわりはありますか?
まず、常設展示の入館料が500円、ワンコインなんです。そして、高校生以下が無料なんですよね。家族全員でいらしていただいても2,000円くらいしか掛からないんです。もし入館料が1,500円だと4人で6,000円になってしまうので、美術館へ行く前に金銭的な部分でもう敷居が高くなってしまうんですよね。あとは、作品のクオリティがとても高いおかげもありまして、小難しく考えずに感じて楽しめるんですよね。黙って鑑賞するのではなくて、「わ〜!」とか嬉しそうに歓声をあげられていたり。「美術館へ来ること自体が初めて」というお客様も結構いらっしゃって、現代アートは親しみやすいものもあれば難しいものまでいろいろとありますけれど、興味を持っていただく入り口としては良いのかなと思います。

>より楽しむための見所を教えてください。
館内の作品には、隠れて見えないようにしていること自体が作品というのもあって、そういうのを探しながら楽しむのも良いかなと思います。最初にとっかかりが無くて敬遠されてしまう方もいらっしゃいますので、ヒントとして解説のシートも御用意していますが、読むことが重要なのではなくて、さらの状態で自由に観ていただければ良いと思います。ロン・ミュエクの作品は入ってすぐのところに設置されているんですけれど、みなさん「あっ!」と驚かれていますから。

>全体として動きがあるので飽きさせないです。観る度に違った印象を与えてくれます。
そうなんですよ。よじ登ったり、暗い部屋に入っていったり、ちょっと遊園地的な感じもあるんですよね。それもあって飽きずに最後まで観ていただけているのではないかと思います。

>商店街に作品が展示されている『チェ・ジョンファ OK!』は、アートと街との連携が見事に体現されていて、とても新鮮な試みですね!
そもそもが“街づくりに寄与する”というのが目的なので、こういう企画をもっとどんどん行っていけると良いですね。美術館の開館後は周辺にも人が流れ出してきていて、近くにレストランがあるんですけれど、今まで全然来なかったような客層にいらしていただけて、「お客様がすごく増えた」とよく御礼を言っていただけるんですよ。県外からもたくさん人がいらしていただいているので、街全体で盛り上がっていけると嬉しいです。この美術館が開館してから、小中学校、幼稚園も含めてたくさんの団体さんにもいらしていただいていますので、鑑賞教育という面ではすごくプラスになっているのではないかと思っています。無料だからというのもあるのかもしれないですけれど(笑)。

>幼少期は潜在的な部分での影響を受けやすいですから、良いものを吸収できる環境はすごく大事です。アーティストが実際に十和田へ滞在して作品を制作されたそうですね。
全てではありませんが、ほとんどの作品がそうです。アーティストが十和田に滞在して、ホテルに住んで、通って描いていただいた作品もありますし、“十和田”や“青森”、“リンゴ”とか“馬”をイメージした作品を作っていただいたり、他の美術館にあるのと同じものを作っても仕方ありませんので、ここでしか観ることができないというのはやはり大きな魅力のひとつだと思います。

>現在も活躍されているアーティストのみで構成するという不安要素を逆に、この美術館のためだけに作品を制作し、ここでしか観られないという魅力に活かされているのが素晴らしいです!アーティストとの印象に残るエピソードがあれば教えてください。
特に現代アートでは人と話すのが好きなアーティストが多くて、楽しんでいろんな街の住人と話をしていたようです。何日間とか何週間に渡って設置の調整や制作をされるアーティストもいらっしゃいますけれど、中には行きつけの飲み屋ができて、仲良くなっている方もいらしゃったりして、そういった話を聞くと、街との関わり方としてはすごく理想的だと思っています。

>現代美術についてどのようにとらえられていますか?
観る前は…もちろん観た後にも難しいといった感想はあるんですけれど、同時代に生きているアーティストの表現なので、本当はすごく共感しやすいと思うんです。500年前のルネサンスの絵画の方が理解という意味では難しいはずで、先入観のために逆にとらえられてしまっているような気もしています。“今”を同じように感じ、同年代でお話ができる人の表現なので、本当はわかりやすいはずなんです。それをもっと伝えられる手法や準備をこちらもしなくてはいけないんですけれど。

>美術館を通じて感じてほしいことは?
美術館ではあるんですけれど、無料で入れるオープンカフェがあったり、野外スペースもこれから出来てきますので(2010年春完成)、散歩がてら気軽に立ち寄っていただけるようになると思います。意外とまだ来られたことのない住民の方もいらっしゃいますので、近隣の方にももっと気軽にいらしていただけるようになると良いですね。

>これから取り組んでいきたいことがあれば聞かせてください。
今回、こういった街の取り組みができ始めてきましたので、もっと密に続けていきたいです。全国的にどの地方も抱えている問題なのでしょうけれど、駅前や商店街のシャッターが閉まって活気が失われてしまっている現状の中で、その再生に向けた問題もすぐには解消できないかもしれませんが、この美術館をきっかけに観光や商工セクションの方々が集まって企画を考えたり、町内でもいろんな団体の方が積極的に参加してくれたりといった動きも増えていますので、住民の方々と一緒になって少しづつ取り組んでいきたいと考えています。あとは、青森県立美術館や国際芸術センター青森とも連携し始めているんですけれど、“青森といえばアート”というイメージももっと売り出していけるといいですね。

>最後に、青森の良いところを教えてください。
僕も一昨年に引っ越してきたばかりなのですが、未知の領域というか、ディープな文化が結構多いと思うんです。“寺山修司”や“棟方志功”をはじめとして、“恐山”もそうですし、方言もあって言葉も全然違いますし、それまで訪れたことのなかった者にとってはすごく興味深い文化がたくさんあるので、それらをもっと面白がって発信しながら、一緒に盛り上がっていけると良いですね。


<フリー冊子のお問い合わせ>
サロン『macro
住所 北海道札幌市中央区南3条西1丁目 タカラビル3F
営業時間 月曜日〜金曜日11:00〜19:00/土曜日・日曜日11:00〜18:00
定休日 火曜日
電話 011-271-0396
ウェブサイト http://www.macro-lab.com
フリー冊子は『macro』ならびに札幌市内のカフェ、ショップ、ギャラリーなどで配布中です。この機会にぜひ、青森の旅にお役立ていただけければ幸いです。


text Pilot Publishing / photograph Kei Furuse(studio k2)
July,2009



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