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ミュージシャン『OKI』<DUB AINU BAND>


トンコリ奏者OKIが辿り着いた故郷・北海道。

カラフト・アイヌの伝統弦楽器“トンコリ”の奏者として独自の音楽スタイルを切り拓き、アイヌ音楽の魅力を国内外に知らしめてきた稀有なミュージシャン/プロデューサー・オキ。幼少の頃より居場所を渇望し、トンコリとの運命的な出会いと、自己の存在を探求し続ける旅路の果てに、ようやく辿り着いた故郷・北海道。すべてを受け入れた時、彼が音楽活動の拠点として、心安らげる安住の地として、北海道に在住を決めた理由とは。






Interview(August,2010)

>まずは改めて生まれから聞かせてください。

生まれたのは神奈川県で、北海道に住んでいたのは3〜4歳の頃かな。なんとなくは覚えていたかもしれないけど、記憶はほとんど無し。それからは湘南で暮らしていたので、普通にあの辺のクソガキみたいな感じだった。でも、オレにはずっと居場所が無かったんだよね。樺太アイヌの弦楽器という土地に根ざしたものをやっているわりには、アイヌからも日本からも浮くし、何かの周辺にいるような、いつも真ん中にいない気がする。それがオレの立ち位置だね。

>学生の頃はアートを志していらしたんですよね。
そう。アートの特性として、流れていくというか、どこかに呪縛してつなぎ止めておくものではない気がする。アートだから自分を固定したくないというのがあるのかもしれない。どこかに収まることに対して反発心があるんだ。ヒップホップとかレゲエの人達には居場所があって羨ましいよ。オレのやっている音楽には居場所が無いんだ。レコード屋にもジャンルの棚が無くて、店によってワールドミュージックとかレゲエで並べられていたりするし、Jポップだったりもする。スタッフさんもさぞ困るんじゃないかな…(笑)。音楽業界も例外ではなく、立ち位置が独特なんだよね。

>居場所が無い感覚は幼い頃からあったのですか?
あったね。協調性がないだけなのかもしれないけど…(笑)。でも、心の奥底の方にはずっと抱えていたし、北海道で生まれ育ったアイヌともバイブスが全然違うんだ。北海道へ来ると、「オマエみたいな都会で育った奴にアイヌのことがわかるか!帰れ!」とかよく怒鳴られた。それが嫌で、北海道人になりきろうと努力したこともあったけど、そんなの長くは続かないよね。オレは絶えずいろんなものとの中間地点にいる立場なので、今はそのことを受け入れて、無理してアイヌにも道産子にもなりきろうとも思わない。結局、オレはオレだし、いまだに湘南弁だからね…(笑)。

>そして、36歳の頃にトンコリと出会い、音楽に目覚められたとのことですが、遅咲きながらもミュージシャンを志す決心をされた理由について聞かせてください。
そもそもトンコリと出会った原因というのが、失業なんだよね。東京にも北海道にも居場所は無いし、日本がとにかく嫌になって、ニューヨークへ行ったんだ。だけど、オレが日本にいなかった時期というのが、バブルの一番良い時期だったらしい。オレがニューヨークで死にそうになっていた時期なのに、たまに日本へ帰ってくるとみんなすごく羽振りが良くて、タイミングも悪かったんだよね…(笑)。ニューヨークでは映画の映像関係の仕事をしていたんだけど、ある時に日本のフィルム会社から仕事のオファーがあって、日本へ呼ばれたんだよ。これはチャンスだ!と思って、ニューヨークと日本を往復するようなリッチな生活の第一歩だ!みたいな甘い考えをしていたら、その映画の企画が突然無くなってしまって。プロデューサーも夜逃げ同然で連絡がつかなくなって、ニューヨークからの旅費どころか一銭も支払ってもらえず終い…。そんな落ち込んでいた時期で、とにかく時間だけはあったので、気晴らしに北海道へ来ていたら、親戚からたまたまトンコリを譲り受けたんだ。今になって振り返ってみると、それもきっかけだったのかもしれないね。その時に仕事がうまくいっていたら、壁に飾ってあるただの思い出になっていたかもしれない。それとも、ロスか何処かに住んでいる嫌なプロデューサーになっていたかもしれない。今も嫌な奴なんだけど、もっと嫌な奴になっていたと思う…(笑)。

>初めてトンコリに触れられた印象はいかがでしたか?
トンコリを手にした時、最初はそれほど印象は良くなかった。楽器として全く未知で不安があったのと、楽器として確かに珍しいし、アイヌというキャッチコピーも良いんだけど、それだけで物は作れないと思った。アイヌというブランドでありさえすれば、何でも良いのかという話になってしまうから。ただ、なんとなく筋があるようには感じていた。不器用だけど、なんとかなるかも!みたいな。アーティストとしての表現方法をようやく見つけたという、どこか安心感みたいなものもあった。あとは持ち前の根拠の無い自信と勘違いで押し進んできちゃったね…(笑)。自信なんて全然無いし、すごくびびりなんだけど、どこかに根拠の無い自信が宿っているんだ。ただのバカなんだけど、それは得なんじゃないかと思うことがあるよ…(笑)。音楽も好きだったけど、みんなと同じようなレベルでだったから、それはもしかするとアーティスト根性なのかもしれないね。例えば、キャンバスに絵を描いたり、現代美術でインスタレーションしているアーティストは、何百人何千人何億人と世界中にいるわけ。そこにいるトップアーティストは、その人にしかできない考え方と物の見方で個性的な作品を作り上げていて、そういうオリジナリティという武器で闘っている。あとは、そのトップアーティストを真似して追いかけていく人達が多いと思う。そのアーティスト根性というのは、他の人が誰もやっていない考え方や方法で作品を作るのが第一条件だけど、残念なことにアーティスト時代のオレにはそれが無かったんだ。

>アートからの流れで自分なりの表現方法へ辿り着かれた?
自分しかできない方法を見つけるというのがトンコリだったんだ。普通に音楽として最初から始めていたら、もしかするとそうはいかなかったかもしれないね。ただ、自分自身ではトンコリは弾くけど、あくまでそれを中心にした展開ととらえていたので、ミュージシャンという自覚は無かった。最初のうちは何も考えずに調子良く活動できたんだけど、困ったことにちやほやされ始めちゃったんだ。“サハリンの滅び行く弦楽器にアイヌ民族の青年が再び取り組む”みたいなお決まりの文句で社会面のネタになるわけ。どんなに悪い奴だろうが下手くそな奴だろうが新聞に載せてもらえるんだよね。そういうことにだんだん気がついてきて、みんながオレのことを見ているのは、オレの何を見ているのかな?とよくまわりを見渡してみた時に、残念ながらオレのファンではなかったんだ。言い方は悪いかもしれないけど、それはアイヌや人権に熱心な方々で、正直な気持ちとしてすごくお世話になったと感謝しているんだけど、ただ、そのまま続けていくと、アーティストとしてまずいとも思った。「こういうアイヌ音楽があるんだ」で終わってしまうのではなくて、ちゃんと自分の表現として音楽をやらなきゃダメだって。それからはそういう新聞の社会面で露出したり、アイヌや人権色の強い集会へはあまり顔を出さないようにした。それは自分にとって一番苦しい転換だったね。

>プロデューサー的な感覚をお持ちなのも頷ける気がします。現在は北海道に在住されていますが、拠点を映された理由について聞かせてください。
アイヌに関わることをやるんだったら、その土地へ引っ越した方が良いとはずっと考えていた。いろんなアイヌの勉強をしなくてはいけないし、やっぱりこっちのバイブスを理解していないといけないから。東京に住んでいてトンコリというのも格好悪いし。それからずっとそのまんまだよ。

>当然のことながら、音楽活動をされる上での環境として東京の方が便利だと思いますが?
それはそうなんだけど、やっぱりこの広さに慣れてしまうと東京には住めないよね。…無理!これからまたどこかへ行っちゃうかもしれないけど、今は人生最大の安定期だね。昔は2年に一回は引っ越しをしていたから。

>『トンコリ』ではトンコリだけでアルバムを作られたり、『サハリンロック』ではルーツとなるサハリンを訪れたり、いつも自身の限界に挑戦されています。
つい日常のサイクルに追われて、物事を深く考えなくなってしまうので、そういう時に自分を思い知るためのアクションに出ないとダメになってしまうよね。今回は知人に誘われてサハリンへ行って、そのバイブスがたくさん入った音を聴いてもらいたくてアルバムを作ったんだけど、そこへ至る経過というのはあくまでプライベートなことなんだ。プライベートが充実していないと良い音楽はできないと思っているんだよね。ハワイで息抜きして良い音楽を作るミュージシャンがいれば、サハリンで鼻水垂らして帰ってくるミュージシャンもいるわけだけど…(笑)。でも、サハリンという最果てな感じがまた良いんだよ。国後とか択捉とか、ロシアでも日本でもない島はオレと同じだよね。その辺が好きだね。

>今もなお複雑な歴史や問題を抱えている土地です。海を超える島という土地柄も異国感をさらに強く感じさせるのかもしれませんね。
しかも、中身がヨーロッパだからね。ヨーロッパの街が稚内から20キロ行くか行かないかのところにあるんだよ。ヤンキーとか歩いていないからね!アジアとサハリンの差というのは、ヤンキーがいないという、生物の層の違いは確実にあるね…(笑)。あとはシャラポワみたいな女性がそこら中に歩いていて、みんなきれいでびっくりした。

>フェスやツアーで世界各地をまわられていますが、改めて北海道の印象はいかがお持ちですか?
どこか外国へ来た気がする。日本ぽくない、どこかアイルランドみたいな感じ。アイルランドの国際空港は、降りた連結通路から匂うんだよ!牧場の匂いがするの。あの辺もどこまでが飛行場で牧場かわからないんだよね。北海道みたい。だから外国ぽいよね。

>北海道の良いところについて聞かせてください。
地域によって違うと思うけど、一番良いのは冬にスキーができるところだね。夏はキャンプできるし。

>意外なお答えです…(笑)。
頑張れば土地も買えるし、畑もやろうと思えばできるし、夏は日が長くて気持ちが良いよね。良いところはいろいろあるんじゃないかな。なんかすごい普通だけど…(笑)。

>北海道で好きな場所を聞かせてください。
日高山脈!旭岳も良いけど、日高山脈はしびれるなあ…。ぞっとするような神様の領域というか。夏でも人が死んでしまうことがある危険な場所で、そういう山々は“カムイミンタラ”といって“神々の遊ぶ庭”と呼ばれているけど、“カムイ”というのは“熊”も意味しているので“熊の庭”でもあるんだよね。熊の庭だから人間が行ったら命の補償なんてどこにも無い。そして、そういう場所にある木一本、石一個、全てが完璧なんだよね!この辺だといろんなものが生えていてうっとうしいけど、山の頂上へ近づくと植物や虫の限界を超えてくるの。そうすると選ばれたものしか生えていない。セレクトされているんだ。

>“セレクトされている”というその感覚は新鮮ですね!
高度が上がっていくと、スピリチュアルなものが増えていくんだよね。スピリチュアルなものが何かというと、人間臭さが消えていくことだと思う。人間がいろいろと抱えている、弱い心も強い心も、邪悪な心もよこしまな心も、全部無効にしてくれる存在、それは自然とも言うんだけど。厳しくて嫌になるけど、厳しい場所だからこそすごいものがあったりするんだよね。そういった意味で、オレの中で日高山脈は世界遺産だね!知床は比べると少し都会かな。波の頭みたいに尖った尾根が、何百メートルにも渡って続いていて、その両壁を見ながら歩いていくのも気持ちが良いんだ。

>それにしても、ビジネス色の強い音楽業界を否定するわけではありませんが、地方で独自のスタンスを貫いて活動を続けられているのは素晴らしいです。
統計を見ると、今はレコード業界全体の売り上げが4年前の半分なんだよね。だから、一生懸命作ったとしても厳しい時代になってきている。みんなよく「CDが売れなくなった」と愚痴るんだけど、ダサイ作品を作っていて言えないと思うんだ。とりあえず作品が良くないと景気悪いなんて関係ないよね。そして、自分の良いと信じる良いものを作れば、掛かったお金や労力というのは自然と回収されてくるものなんだ。他の人達にペイしなきゃいけないし、印税も欲しくなってくるのは当然だと思うけど、売れなくてもそこは我慢して、時間を掛け、納得できるものを作らないと、やっぱりそれがまわってこない。最低限のレベルで作品がベストでないと厳しい。これからはミュージシャンにとってさらに生き残りが厳しくなってくるんじゃないかな。

>失礼ですけれど…OKIさんもいろんなことを考えられているんですね(笑)。
いろんなさぼりも取り返さなきゃいけないじゃない…(笑)。ちょっと反省しているんだけど、やっぱり面白くなくても毎日コツコツやらなきゃいけないと思っている。「宿題は毎日ちゃんとやりましょう!」と自分の息子や娘に言っていることを、まずオレがやらないと…(笑)!自分に直すことがたくさんあるので、みんなに偉そうなことなんて何も言えない。でも、気がついただけ良いじゃない。だから大丈夫!それを不安がらせるのが世の中の常套手段だから。暗いニュースを聞かせて、画面が変わったらアレ買え、コレ買えって。恐怖を与えて商品を買わせる、世の中の手口。

>確かに、最近は特にメディアの露骨さや極端さが強まってきているのは気になります。想像もつきませんけれど、普段はテレビを観たりされるんですか?
テレビはあるよ。マスプロアンテナというのが壊れてしまって、NHKとUHBしか映らないんだけど。テレビを付けると、「このテレビは来年観れなくなります」って繰り返しているけど、あれも脅迫でしょう。いつも絶えず中国や北朝鮮が襲ってくるとか、ウイルスが蔓延しているとか恐怖を与えて、その反動で物を買わせるために働かせる。でも、うまくいかない奴は強盗するし、殺人を犯してしまうじゃない。あれは世界で犯罪を犯せという負のメッセージだよ。そういうことに惑わされないようにすることは大事だと思う。オレもすごく不安になるよ!いつも電車に乗って札幌へ近づくと、分譲住宅とかがどんどん広がってきて、見た感じはちゃちでプラスチックみたいなのに、2000万円とかするんだよ!それをみんな買っているんだから。あれも全部、借金だからね。

>大半の方はローンを組まれていますよね。現在は学生でも当たり前のようにカードを所有している時代ですし。
今の世の中は不安材料がすごく多いから、その仕分けをしないといけない。一番良いのはテレビを観ないこと。ずっと付けているとやっぱり変になってしまうよね。


『SAKHALIN ROCK TOUR 2010』<追加公演>
schedule 2010年9月9日(木)
time 開場 19:00/開演 20:00(予定)
place 函館『BLUE POINT』(北海道函館市本町9-5-2F)
cast OKI DUB AINU BAND(OKI /居壁太/中條卓/沼澤尚/内田直之)
system ¥3,500(tax in) ※1ドリンク別途
information 『プリントファクトリー』(telephone 0138-41-6888)

『SAKHALIN ROCK TOUR 2010』
schedule 2010年9月10日(金)
time 開場 18:30/開演 19:30
place 札幌『ジャスマックプラザザナドゥ』(北海道札幌市中央区南7条西3丁目)
cast OKI DUB AINU BAND(OKI /居壁太/中條卓/沼澤尚/内田直之)
system ¥3,500(tax in) ※1ドリンク別途
ticket ローソンチケット(L-12997)/チケットぴあ(P-110-850)/イープラス/タワーレコード札幌PIVOT店
information 『SMASH EAST』(telephone 011-261-5569)

『SAKHALIN ROCK TOUR 2010』<追加公演>
schedule 2010年9月11日(土)
time 開場 22:00/開演 23:00
place 阿寒湖『イヌコタン・オンネチセ』
cast OKI DUB AINU BAND(OKI /居壁太/中條卓/沼澤尚/内田直之)
dj NORTHERN LIGHTS SOUND DIMENSION
system ¥2,500(tax in) ※1ドリンク別途
information 『ポロンノ』(telephone 0154-67-2159)

『SAKHALIN ROCK TOUR 2010 ~OKI special solo LIVE~』
schedule 2010年9月12日(日)
time 開場 17:00/開演 18:00
place 知床『CAFE PATH』(北海道斜里郡斜里町峰浜43-1)
cast OKI
system ¥2,500(tax in) ※1ドリンク別途
information 『CAFE PATH』(telephone 0152-28-2210)


OKI
アサンカラ(旭川)アイヌの血を引く、カラフト・アイヌの伝統弦楽器“トンコリ”の奏者。アイヌの伝統を軸足に斬新なサウンド作りで独自の音楽スタイルを切り拓き、知られざるアイヌ音楽の魅力を国内外に知らしめてきた稀有なミュージシャン/プロデューサー。 1995年の『KAMUY KOR NUPURPE』から2007年の『DUB AINU BAND LIVE IN JAPAN』まで12作品を発表。2005年には伝統曲と正面から向き合い、トンコリだけで録音、制作されたアルバム『TONKORI』をリリース。また、アイヌの天才的歌手・安東ウメ子の2枚のアルバムでは演奏とプロデュースを手がけ、現代に息づくアイヌ音楽として高い評価を受ける。 そしてここ数年オキが取り組んでいるプロジェクトのひとつに“DUB AINU BAND”がある。海外のフェスティバル出演の経験から、今日的なマナーであるドラムとベースを導入たバンドは、2005年以降アジア、アメリカ、ヨーロッパなど世界各地をツアーし、また世界最大規模のワールドミュージック・フェスとして知られるWOMADへの参戦(2004年オーストラリア、2006年イギリス、2007年シンガポール)や、日本国内でも数多くの夏フェス(FUJI ROCK、朝霧JAM、RISING SUN ROCK FES、渚音楽祭、SUNSETなど)に出演。2010年には待望のNEWアルバム『SAKHALIN ROCK』をリリース。
website http://www.tonkori.com



text Pilot Publishing/photograph Kei Furuse(studio k2)
August,2010

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